小嶋先生と岡先生

昨日は小嶋先生(キーポンの人)と岡先生(相互適応の人)が講演会に来てくださった。

まず小嶋先生。自分の理解をメモる。

  • 「他者に対する想像力」のメカニズムを探るという一貫したテーマがある
  • 言語を獲得するためにはどうすれば良いか。そこで赤ちゃんが言語を獲得してく様子を見てみると「他者との関わり」が重要であることがわかる。またその関わりの原初的なものとして、目線や振る舞いなどを使う「非言語的なコミュニケーション」があって、これが重要
  • そいうった「他者との関わり」を実現するためには「身体」が必要
  • 原初的なコミュニケーションを行うために「アイコンタクト」や「共同注意」が大事ではないか
  • 自閉症児は人とのコミュニケーションを嫌うが、キーポンとの親和性が高い。なぜか?普通、人は他者とコミュニケーションする時、他者から発せられる様々な情報(顔の表情や目の動きなど)をsocial filterによって情報を絞ることで、コミュニケーションできる。一方、自閉症児はそのsocial filterがうまく機能せず、大量の情報が押し寄せる。あまりの情報の勢いに自閉症児はコミュニケーションを拒んでしまう。しかし、キーポンのように「アイコンタクト」や「共同注意」だけの、シンプルな情報を発するので、自閉症児はその意味を理解できる
  • 「自立的に動かす」ことが目的ではないので、裏でロボットを操作する人がいる。これは石黒さんのアンドロイドについてもいえてますね。
  • 一連のビデオを見たが、健常児も自閉症児も言える事は、「母親」を安全基地として行動するということ。まず母親にロボットにさわってもらったり、ちょっと近づいては母親のいるところに戻ったり。そういった「拠り所」がないと子供は不安で仕方がなくなる。この部分をもっと突き詰めていけばおもしろいことができるんじゃないかとちらっと思う。
  • キーポンが母親と自閉症児との接点を作っている。コミュニケーションの「触媒」となっている。(ここで先日の化学の先輩の話を思い出す。反応を促す触媒って重要!)

あと懇親会で話した内容をば。

  • いろんなビデオを見たが、自閉症児は母親に対して、コミュニケーションできているように見える。ではなぜ他人だとコミュニケーションをしたがらないのか→母親には愛着があるようだが、やはり健常児のような感じで母親と接することができない。(例えばお母さんが子供を見ていると、子供はその雰囲気を察知して目をあわすが、それができない、気付かない。)
  • マクソンはいいモータだが、高い。栄のモータはそこそこ安いが音がでかい。私が常々思っている事は、モータの音というのは、それを聞くと途端に「こいつはロボットだ!」ということに気付いてしまって興ざめしてしまう。これはカウボーイズの阿部さんが言っていたが、CGを描く上で、丸いブラシでいくら奇麗に塗ってリアリティーを出そうとしても、丸いブラシの跡がちょこっと残っているだけで、無意識に冷めてしまうという話と同じようなもの。このあたりは小嶋さんも気を配っているようで、キーポンも全くと言っていいほどモータ音がでない。人の筋肉はその点すごいねーと。
  • また、常々w思っている事で、ロボットがヒトの生活の中に入っていく時には、動作し続けるというのが重要なのではないか。今までのロボットは電源があり、それをオンオフしていたが、その行為自体がロボットに対する設計姿勢を引き出してしいるのではないかと思っている。たまごっちにも電源は付いていなかったが、電源が常にオンであることで、たまごっちがいつも気になってしまう存在になる。どこかでやってたキーポン特集の時、小嶋さんがインタビューを受けている後ろでキーポンが動いていたが、これはうまいと思った。ロボットが小嶋さんの事を気にして(いるように見える)、そういう些細な事でロボットに「ヒトらしさ」を感じされ、親近感が湧いてくる。
  • 「ロボットが小嶋さんの事を気にして(いるように見える)」というのは、ヒトの想像する能力が効いていて、それをロボットに持たせる事ができればコミュニケーションの質は全く別のものになっていく。これは実にわくわくさせられる!
  • 小嶋さんはロボットも作れて、発達的なアプローチにも長けている。ダブルメジャーだと俄然活躍の幅が広がる!


岡先生。

  • 異分野の人たちが集まって『インタラクションデザイン』をする分野横断的な授業の取り組み
  • デザイン系と情報系のヒトがロボットなどを用いてインタラクションデザインに取り組む
  • 今はレゴマインドストームでやる人が多い。楽な方に流れてしまう。
  • うまく連携がとれるグループと連携がとれなくて完成しないグループがある
  • 一人でなんでもやろうという人がいるグループは連携がとれない
  • 作るロボットによって、デザインの人が極端に苦労するものや、情報系の人が極端に苦労するというパターンがほとんど。うまくバランスをとるにはどうすれば。。
  • 学生のモチベーションをかき立て、保つためにどうすれば良いか。先生が口を出しすぎるとやる気をなくしてしまう。でも口を出さないと無難なものしかできない。学生は楽をしようとしてしまう。
  • 学生の意欲を引き立てるため、具体的な目標(展示会など)を決めるとそれに向けてがんばれる
  • 大学の授業としてやっているので、時間的な制約と、いかに授業としての意識をなくすか。1学期だけだとそんなにたいしたことはできない。ロボットを完成させるためには週2コマだけではだめで、それ以外の時間も自主的にやらないといけない。そういう感じになるためには普通の「授業」としての意識では難しい。

岡先生の話は、私がTAをやっている実験とかぶるところがある。モチベーションや雰囲気を高く保つにはどうすれば良いか考えるよい機会となった。とても有意義な時間だ!